初めて自分が計画して行った登山は19歳の頃だったと思います。1979年から42年間、登山をしていることになります。二つの山岳会での経験を積む中で日本の山を季節で分ける習慣は確かにありました。山岳雑誌もそのタイミングで雑誌が出版されていたので、春山、夏山、秋山、冬山とスパッと切り分けるのが、ほとんどの人の認識ではないでしょうか。
雪山というと冬である印象が強いかと思います。日本の雪山は北海道から九州屋久島まで存在しています。南北に長く標高3000メートル級の山岳地帯を有する日本列島では、9月の下旬から6月頃まで降雪があるのです。一年12か月のうち、8~9か月間は日本のどこかでは雪が降っていることを忘れてはいけないと思います。
自分がどの山、どの時期、どのコースを登るかで大きく変わるということを体験を通じて身につけてきました。自分が積んできた体験は山岳エリアで起きうる事象の一部分でしかないのだという臆病さと謙虚さが大切です。
地球温暖化の影響で人の住むエリアでの酷暑・猛暑は当たり前になったことから標高2000メートルを超える山々も暑くなっているだろう、雪が少なくて簡単に登れるだろうと単純に考えるのは危険です。
前置きが長くなりました。
2021年5月連休に北アルプスに入山した人は身をもって実感したかと思います。お出かけにならなかった方にも雪山の素晴らしさと冬山に対する謙虚さを知ってほしいと思います。
11月から5月までに発生するシベリアからの寒気流入による標高2000~2500メートルを超える領域で低温と強風、降雪があれば、そこは冬山です。
問題はその厳しい自然環境の強度と持続時間に差があるということなのです。春山が冬山に比べて入門向きと考えられるのは、荒天が短くて済むケースが多く、太陽が照れば気温が高くなるからなのです。
⇒ このことをもって、山が簡単になったわけでも安全になったわけでもありません。
世間で10月から11月の秋山や3月から5月の春山といわれている時期は素晴らしい過ごしやすい気象条件のすぐ隣に冬将軍が牙を剝くという認識を持つことが大切です。
油断させて、山奥に引き込んで、足元をすくわれる感じなのです。
2021年のゴールデンウィークは各地の山において、荒天による遭難が発生しました。自然の猛威には人は耐えることは難しいものです。適切な装備をタイミングよく使いこなすことももちろん大切ですが、気象状況が悪化した場合は可能な限り標高を下げ、樹林帯に逃げ込むなど、強風に晒されないことが重要となります。
登山において最も警戒すべきは下記です。
それらが同時に起きると、低体温症となり脳機能が低下して正しい判断ができなります。命を失う危険に晒されます。
- 強風
- 低温の雨・ミゾレ
- 視界不良(ホワイトアウト)
12月から2月にかけては厳冬期といって、先に述べた厳しい気象条件が数日以上続くことが多いです。生活圏においても冬であるという認識があることから、山に入ろうと考える登山愛好家は準備や心構えが十分なことが多いものです。
ところが5月のゴールデンウィークともなると、生活圏では夏日も出る時期です。北アルプスの各山域の登山口から標高1500メートル付近であれば、植物の芽吹きや登山道わきの花に声を弾ませる時期です。ところが標高2000メートルを超えると積雪は急激に増して雪山となります。
3000メートル級の山々に降った雪は稜線の風上や日当たりの良い場所から融け始めてきますが、風下の吹き溜まりや沢筋では真夏まで雪が残るほど雪がたまっています。
日本は地球上のどのエリアに比べても、たくさんの雪が降る国土です。中緯度の国土に大量に降る雪は日本に冬山登山という素晴らしい登山スタイルをもたらしただけでなく、天然のダムとして国土を豊かに潤してくれているのです。
日本の氷河
剣立山エリアに存在が確認されている氷河は御前沢、内蔵助カール、三の窓、小窓、池ノ谷の五か所です。長野県には鹿島槍ヶ岳カクネ里、唐松沢の二か所とあわせて、日本には7か所の氷河が認定されています。
日本の氷河地形や現存する氷河については別の機会に。
コメント